色んなものの設計思想
私は、コンピュータやら生物学やら心理学やら建築学やら、色々な本を読むことがあるのだけれど、そのそれぞれを読んでいるうちに、それぞれの分野において独自の「思想」があることを感じていた。
そして、なんとかそれをうまくまとめたりすることができないものかと考えていたのだけれど、いったいどういった切り口でまとめればいいのかというのが判然とせず、これまで考えあぐねた次第である。
しかしながら、最近になって、「設計思想」という観点に基づいてこれらの思想をまとめることが可能なのではないかという思いつきを得た。
さらにこれについて考えを深めるにつれて、これはなにやらうまくやれば「設計思想の研究」という一分野が作れるのではないかという、期待を持つに至った。
そこで、ここに、設計思想をまとめるといってもいったい何をするべきなのか、そもそも設計思想を扱うといってもどういうものを扱うのかということについて、少し書いてみることにする。
・設計思想の研究の方向性
設計思想を研究するならば、以下のようなアプローチが有効なのではないだろうか、という、案を示してみる。
1「現在、または過去にあった設計思想について、その設計思想が成立するに至った歴史的経緯、その設計思想の歴史的意義について、情報を収集、検討する。人文学的アプローチ。」
2「数多ある設計思想を抽象化し、一般的設計モデルを構築する。これにより、分析を可能とする。」
3「ある設計思想について、いくつかの前提条件のもと、その設計思想の有効性、生産性について、数学的、経済学的、あるいは何らかの手法で分析し、定量化する。科学的アプローチ」
2は、人文学的アプローチと科学的アプローチをつなぐ架橋的役割を担っているということができるかもしれない。
・設計思想の例
実際に設計思想を扱うとしたら、どのようなものを扱うのか、2つの例を挙げてみる。
・フィードバック機構
フィードバック機構というのは、あらゆる場面で確認される。組織の活動でいえば、PDCAサイクル、生物学的機構では、内分泌は負のフィードバック機構によって恒常性を保っている。
PDCAサイクルが社会に普及したのはいつ頃なのか、フィードバック機構というのはどのような図式によって表現できるか、また、フィードバック機構のあるなしによってどのように成果が変化するかを定量化して調べることが目標となる。
・モジュール化
プログラムにおいて、一定の入力に対して一定の出力を返すプログラムをモジュールとしてまとめ、それを利用するという方式をとるのはよくあることである。
また、組織においても、部署ごとに仕事を割り振り、仕事の注文という「入力」に対して、仕事の結果という「出力」を返してくれるということは、部署ごとに仕事を分けるというのはモジュール化の例といえる。
モジュール化についても、フィードバック機構と同じように、普及の経緯の調査や図式表現、定量化が目標となる。
・設計思想の応用と展望
それぞれの分野において独自の思想があるというのは初めに述べたけれど、それぞれの分野で、格差というのが存在するように感じている。
コンピュータ関連の分野では、組織の作り方、働き方、プログラム設計、あらゆることにおいて先進的であると感じている。
一方で、日本の学校教育では、フィードバック機構もモジュール化もうまく行われておらず、幾分前時代的だという印象を持つ。
このような、分野ごとの設計思想の普及の差異を埋め、他の分野で有効性が確認された設計思想を他の分野にも導入するために、設計思想の研究が使えるだろうと思う。
概念として設計思想をまとめることで、設計思想の移植が可能となる。ある分野の人間の集団を、クラスターと呼ぶことにするなら、クラスター間で設計思想を共有することを可能たらしめるのが、設計思想の研究の意義と言えるだろう。
今後の設計思想の研究に乞うご期待を。