ロロの空想

心に移りゆくよしなしごとを書いていくよ!

自己問答「自分がやりたいこと」

 自分でも何がやりたいのか言語化できなかったり、両価的な感情があって、うまく説明できなかったりしたので、自分との対話という形で、問答をシミュレーションしてみることにしました。

 

2「それで、君は何がしたいんだい?」

1「それが最近うまく言葉にできないから困っているんじゃないか。私は、自分の長所は自分の思考を言語化できることだと思っていたが、どうやら違うらしい。あるいは、自分の思考が言語化できる範囲を超えてしまったのか。」

2「言語化できないことは、そもそも思考できないんじゃないの?」

1「まあ、そういう言説もあるが、直感的に感じていること、思っていることがあって、それを自分が普段使っている既存の言語の枠組みでは上手く表現できていないだけなんじゃないか、と思っている。」

2「ヴィントゲンシュタインみたいなこと?」

1「まあ、たぶんは。それとも、既に存在している言葉を自分がうまく使いこなせていないだけかもしれない。」

2「まあ、その両方があるかもしれないね。そういえば、君は教育問題に執心していたようだけど、君が一番やりたいのは、教育問題ではないのかい?」

1「たしかに、私が現実で一番取り組みたいのは教育問題だろうと思う。でも、それも、何か他にしたいことのための布石でしかないのかもしれないと、最近は思い始めたんだ。」

2「というと?」

1「自分は、教育問題という一点を扱いたいわけではなく、教育問題への取り組みを通して、何かより大きな問題を扱いたいのではないかと思っている。」

2「ふむ。」

1「人は、教育を受けて、価値感の内面化や知識と技術の獲得をしなければ生きてはいけない。だからこそ、教育をどのように扱うかというのは、人間のあり方に干渉できる部分ではないかと私は考えたのだろう。」

2「なるほど。しかし、人間のあり方に干渉するというのはいささか抽象的すぎて、僕にはよくわからない。」

1「そうだな。私は、『世界』を作りたいのではないかと最近思うんだ。」

2「世界を作る?天地創造の神になりたい、とかそんなことなのか?」

1「まあ、そういうことに実際は近いのかもしれない。実現性は置いといて、希望としてはね。そして、自分の作った世界の中で、自分が思う生き方がしたい。」

2「しかし、それは随分恣意的ではないか?」

1「まあ、恣意的といえば、そうだろう。私が普段から色々な社会問題に取り組みたいと思って色々しているが、それも結局は自分が思う世界を作りたいからという、そういった恣意的な欲望から出発するのではないかと思うよ。むしろ、恣意的ではない欲望なんてのは存在するのかい?」

2「さあ、それはわからないよ。すべての欲望や正義感は恣意的なものかもしれない。ニーチェが指摘していたことだね。現在の道徳は基本的に奴隷道徳に基づくひとつの信仰にすぎない、ってことか。」

1「まあ、そういうことになるかな。その思想を採択すれば、だけれど。」

2「君はさっき世界を作りたいといったが、まるで『マギ』に出てくるシンドバッドのようだな。そういえば、君は普段から、自分のことを第一級特異点とかいっているもんな(笑)」

1「そうなんだ。最近、自分がやろうとしていることは、まさにシンドバッドがやろうとしていたことのようだなと思うんだ。私も、世界から争いがなくなり、それぞれが幸せを追求できるようになればいいと思っている。そして、それは一見、人のためのように思えて、自分が考える世界の実現を目指す欲望でしかないのかもしれない。」

2「君はシンドバッドのように、すべての人が対立しないように、同じような思想を持つべきだと思うかい?」

1「いや、それについてはそうは思わない。私は、やろうとしていることこそシンドバッドに似ているが、その内容自体はシンドバッドとはまた違うからな。」

2「では、君はいったいどういう生活を目指したいんだい?」

1「楽で幸せな世界かな。」

2「アバウトだなぁ。」

1「アバウトだと思うけど、本質をついているとは思うよ。今の世の中、苦労する必要がないことで苦労していることばかりな気がする。世界の仕組みをもう少し変えれば、もっと楽に、そして、今よりもっとよい結果が得られるはずだと思うんだ。」

2「なるほど、世界の仕組みを変えることで、楽で幸せに生きることができる世界を実現しようというわけだね。」

1「まあ、目指すところはそうなる。私は、自分のしたいことをして、誰に怒られることもなく、自分が一緒にいたい人と一緒に暮らしていたいと思う。」

2「でも、別にそれなら、世界を作るということまでしなくても、うまくお金を集めて、ひっそりとそういうことして暮らせばいいんじゃないの?」

1「まあ、それもそうなんだけど。でもなぁ…。」

2「何か違うのかい?」

1「そもそも、自分がしたいことが「自分がしたいことをする」という点で、なんだか再帰的じゃないかい?」

2「まあ、そうだな。」

1「これは、私にとっての至言なんだが、”再帰的なものはバグを起こす”」

2「再帰的なものはバクを起こす。」

1「例えば、プログラムで再帰的なプログラムを使っちゃうと無限ループに陥ったりするよね。あと、微分方程式とかも、今は解き方あるけど、あれ見つけるまではバグ扱いだった気がするんだな、よく知らないけど。あと、例えば、『表現の自由を侵害する自由』とか。再帰的な命題って扱いが難しいんだよね。普通に扱うとバグになっちゃう。」

2「なるほどね。で、結局君がやりたいことって何なんだい?」

1「自分がしたいことってのは、自由になることで、なぜ、自由になりたいかといえば、自分がしたいことをするためで・・・。」

2「いきなり、再帰的なバグに陥ってるじゃないか。馬鹿なのか?」

1「馬鹿かもしれない。」

2「結局、自分がしたいことは、自分が思い描く世界を作るということ?」

1「まあ、そうかもしれないね。たしかに、自分がやりたいことというのを小さくして、お金を集めて自由に暮らせば幸せ、と思えればいいのかもしれないけれど。」

2「それではなにか、物足りないと?」

1「そういうことなのかな。ただ、快楽が多ければいいというわけではないのかな、と思ったり。」

2「ミルの質的功利主義、みたいな思想だね。」

1「そういうことになる。」

2「君が目指す世界とはいったいどんなものなんだい?」

1「どうなのかなあ。それがなかなか難しい。働かなくては生きていけないとか、絶対に学校に行かなければいけない、とか、絶対にがんばらなくてはいけない、とか、そういったことがない世界にしたい。それぞれがそれぞれの自由に生きても、生きることも可能な、そんな世界を作りたい。」

2「なるほどねぇ。しかし、そういった風に、色々な自由を認めると管理が大変じゃないかい?」

1「まあ、そういうことになるだろう。画一的な人間たちを一元的に管理する方がはるかに管理は簡単だろう。しかし、それを、管理する技術を向上させれば、自由を与えつつも、今より管理がうまくいくようになると私は思うんだ。」

2「それに関しては、より具体的でな事例がないとよくわからない。」

1「まあ、そうなんだけどね。単純に、自由を拡大することで、全体の利益が失われるとか、管理ができなくなるというのは私は短絡的だと思うんだ。」

2「何か例を挙げてくれるかい?」

1「今だって経済活動を結構自由にしているだろう?それぞれに生まれながらにしてやることを制限して、経済活動の自由を剥奪するとその分だけ社会の利益は増えるといえるのかい?」

2「まあ、それはたしかにそうだね。」

1「そうだろう。自由を認めることで社会全体の利益が増えることもあると思うんだ。というか、管理をうまくすれば、自由の増加は社会利益の増加につながると思うんだ。結局は管理能力の問題なんだ。」

2「なるほど。まあ、そういう考え方もあるだろう。」

1「そもそも、社会っていうものの実体は個人だろう?」

2「それについては難しいな。君が言いたいのは、社会契約論の議論だろ?」

1「そういうことになるな。」

2「それについては、議論すると長くなる。今度にしよう。君がいう、新しい世界を作りたい、というのは何か突発的なことのように思えてしまうんだが、君がそう思うに至った経緯みたいなものはあるのかい?」

1「経緯か。構造主義ってのがあるだろ?」

2「ほう。」

1「私たちは、構造に依存して生きているんだ。私たちは、この世界のこの構造に規定されて生きている。」

2「うむ。」

1「その規定から逃れて自由になりたいんだ。」

2「マギのアルマトラン編だな。」

1「そうだ。イル=イラーに運命を規定されていることに絶望したアルマトランの民たちの気分だ。」

2「君は本当にマギが好きだな。なるほど、君が言う、自由の意味が分かったよ。君はこの世界の規定から自由になりたいと、そういうわけなんだね。」

1「そういうことだ。かといって、それにも限界があることはわかっている。どこまで行っても、私たちは何かの構造に縛られているということに変わりはない。」

2「ならば、君のいう『世界』を作りたい、というのは言うならば構造からの脱出を目指す、ポスト構造主義的な活動ということになるのかい?」

1「そう言うことだろうと思う。構造に規定されていることに絶望したのならば、自分で新たな構造をつくればよい。その構造の中で生きれば、ある程度の自由は担保されるだろうという思想だ。」

2「なるほど。やりたいことは少しわかったよ。でも、この世界に聖宮はないから、シンドバッドか、あるいはソロモンのように、自分の世界を作るということはできないんじゃないのか?」

1「まあ、そうなるだろうね。しかし、世界を完全に変えられなくても、傾けることはできる。」

2「傾物語か。かかっ。」

1「所詮この世界では寿命は有限。限られた時間の中で一人のできることなど、限られておる。世界を変えることはできなくとも、傾かせることくらいならできるんじゃないかの?」

2「おもしろい。」

1「まあ、私がしたいのはそういうことだ。自分が目指す世界を作るという、どこまでも恣意的な自己実現のために、自分の人生を使いたい、というそういうことだよ。そのために、できることから色々やってみようというつもりだ。」

 


づづく?