分野横断的な能力が求められるのはどうしてなのか
色んな所で、分野横断的な能力、学際的な能力、そういったものの重要性が強調されているように感じる。
それがいつからはじまったのかはわからないが、最近ますますその勢いは強くなっているように感じる。
なぜ、いま分野横断の必要性が指摘されているのだろうか。
私は、その経緯について考えてみることにした。
簡単に言えば、
「分業制、要素還元論的手法では解決することのできない課題を解決するために分野横断的な能力を必要としている」ということになると私は考えている。ここで、少しこのことに関して掘り下げてみたいように思う。
これまでの人類の発展の歴史を振り返ってみると、そこにヒントがあるかもしれない。
人類の経済の発展、技術の発展はいかにして行うことが出来たか。
分業が経済発展の基礎となったということは多くのところで指摘されている。私もそのように思う。分業によって、課題を細分化し、人間のリソースを細分化した領域に対して、掘り下げることで発展してきたところがあるように感じる。
それは、単純に上手くいっているように見えたし、今後もそれでうまくいくように感じていたのかもしれない。
この分業の過程は要素還元論的アプローチともいえるだろう。なにかを構成する要素を良くしていけば、全体としても良くなるだろうと考えてアプローチしてきた。
しかしながら、実際はそうではなかったかもしれない。たしかに、構成要素個別が良くなると、全体として多少は良くなるのかもしれないが、それに関して限界がやってきたのかもしれない。
結局、木を見て森を見ずになっていたのか。最終的に、ただ個別の部品をくっつけるだけで全体が機能するわけではなく、それぞれが、一体となって働くときにそれぞれの要素がそれぞれの要素に対して持つ関係が重要であるのではないかという風に思う。
かくして、大切なのは、あくまで構成要素単体ではなく、構成要素それぞれが組み合わさった全体像だということが明らかになって来たのではないかと思う。
しかしながら、これまでの学問的アプローチも技術的アプローチも、基本的には要素還元論的であった。
分業し、細かくすることで課題を解決してきたが、逆に言えばそれ以外の手法での課題解決にはあまり親しんでいないのではないかという風に思う。
だからこそ、今、分野横断的な能力が求められるのではないか。
これまでの分業制、要素還元論的アプローチでは解決することのできなかった全体がつながったときの問題を解決する人材が必要なのではないかと思う。