ロロの空想

心に移りゆくよしなしごとを書いていくよ!

シングルマザーの貧困の複雑な問題点


 現在、シングルマザーの貧困について考えている。しかし、その話をしようと思えば、色々な観点からの議論が必要になってくる。
 シングルマザーの貧困というのは、非常に大きな枠組みの中で考えなくてはいけない。色々なところでたくさんの矛盾を抱えている。

 今思いついたことだけでも、シングルマザーの貧困は、以下のようなことを考えなくてはいけない。

・シングルマザー家庭の貧困による教育格差
 貧困が再生産されているのではないだろうか。
 福祉政策による子どもの貧困の解決、格差の是正が必要である。
 親の貧困が生涯にわたって子の教育レベルに影響を及ぼしている。
(参考:「子どもの貧困」岩波新書)

愛着障害
 幼児期の愛着形成の問題が、生涯引きずられる。その結果、パーソナリティー障害などの原因となる。
 小さい子には、母親がちゃんと接する時間を取る必要がある。
 シングルマザー家庭は働くことができるのか。
 子どもの愛着障害は免れない。
(参考:「愛着障害」光文社親書)

ジェンダー
 女性はなぜ男性に対して給与が低いのか。
 社会的に女性への賃金や就労機会に関しての差別はあるか。
 女性には働こうとするインテンシブが学生時代に男性よりも低いのか。
 現代において女性と男性の社会的役割の差をどのように考えるべきか。


非モテ男性救済
 シングルマザーの貧困の援助のために福祉を充実させてきた北欧諸国でいったい何が起きているか。実質的な一夫多妻制が起きているではないか。
 シングルマザーになっても暮らしていけるから将来のことを考えて結婚しなくても、イケメンと子どもをもうけて離婚する人が増えているのじゃないか。
 非モテ男性は高い税金を取られて経済奴隷になっているではないか。


・大学改革論者
 子どもにお金がかかるのは教育費が高いからである。
 そもそも、大学にそんなに多くの人が入る必要があるだろか。学問のために大学に入っている人がどれほどいようか。もしかしたらほとんどが就職のために大学に通っているんじゃないだろうか。就職先で大学でやったことを実際に使っている人が全体の何割いるだろうか。
 就職のための職業訓練大学なんかを作って学費を抑えた方がいいんじゃないだろうか。
 企業も、大学新卒だけやめたらどうだろうか。

・企業論
 企業が採用する人材としてコストがかからないのは、男性のほうだ。
 教育を大学に投げるのではなく、企業の中で教育すべきじゃないだろうか。
 企業が新卒ばかり採用するのではなく、中途からも正社員として採用すれば、シングルマザーの貧困も解決の方向へ進むのではないか。
 しかし、容易に解雇できない日本では簡単に正社員として採用するのは経営戦略として賢いとは言えない。

・労働法
 各国によって労働観は異なり、例えば、アメリカはわりと簡単に解雇することができるが、日本では正社員を解雇するのは非常に制限が厳しい。
 これは、従来の日本では、労働は契約というより、企業の一員として家族のように共に働き、終身雇用という感覚が主流だったためである。
 終身雇用を前提とするため、新卒採用以外は行われず、それを鑑みて解雇権濫用を防止するための法理が作られたが、そのせいで企業が正社員の採用を渋るようになった。
 現在、非正規雇用は増えている。解雇権濫用法理を見直して、正社員の採用を推進すべきなのだろうか??
(参考:「労働法入門」岩波新書)


 と、このように、経済政策の方向性だけでなく、教育制度や法律についても考えなくてはいけない。

 私が今、シングルマザーの貧困の扱いを難しくしているのは、一般の人々の、シングルマザーへの嫌悪感と、支援を増大することでシングルマザーが増える可能性があるというギャップだろうと思う。

 まず、シングルマザーへの嫌悪感に関して言えば、中高生時代の恋愛経験に遡る人もいるだろう。
 中高生時代に真面目にやらずに男遊び、女遊びばっかりしていた人に嫌悪感を抱いていた人がいるかもしれない。そういった人たちが望まぬ妊娠をしたりしてシングルマザーになり、貧困になったとしても憐れみを感じず、その人のために税金が使われるのが嫌だと直感的に思っている人もいるだろう。
 しかし、実際に貧困に陥っているシングルマザーの貧困は、40歳くらいが平均だという。10代で妊娠して出産した母親がシングルマザーになり貧困に陥っているというイメージは、実情を反映していないと考えた方がよい。(上述「子どもの貧困」より)
 また、シングルマザーへの嫌悪感としては、実際に現在、夫との不和に陥っているが、経済的事情で離婚しえない人からもあるだろう。そういう人にとっては、「自分はこんなに辛い思いをして耐えているのに、自分で離婚を決めたんだからそれくらいの困難は覚悟の上でしょう!」
と言いたい気持ちもあるだろう。
 このために、シングルマザーの貧困家庭へと税金を投入することに不快感を示す人々が一定数いるだろうと考えられる。

 支援を増えることでシングルマザーが増大する可能性については、上で「非モテ男性救済」の項目で述べたことも関係するが、さっき述べたように、
「夫との仲が不和であり、離婚したいが経済的事情により離婚できない」
 という母親が一定数いることが事実だとすると、シングルマザーが貧困に陥らないように支援を北欧並みに増大したとすると、その分、経済的懸念から離婚をためらっていた母親が離婚し、さらにシングルマザーが増え、より福祉の支出が増えるということにもなりかねない。

 基本的に国家の統治戦略として、人々のコントロールをしたいときには、法によって行動を制限するか、経済的に得、または損をするようにしてコントロールするものである。
 シングルマザーの貧困に関しては、貧困に陥ることが分かっていながら離婚し、シングルマザーになったものへの法的制裁を加えることができるだろうか?
 おそらくできないし、仮にしたとしても、DVなど、別のところでの歪みが生じるのは必至である。
 では、シングルマザーになると経済的に損をするようにしてコントロールすることはできるかということについて、現時点でシングルマザーになると経済的に損であるがシングルマザーは一定数いるし、そもそも、シングルマザーの貧困は、その子への影響の観点から一定以上の経済的支援があるので、経済的に損になるようにしてコントロールしようということは難しい。


 今まで述べてきたことから、シングルマザーの貧困に向けて何か解決の方策を取ろうとすれば、どこかで誰かが損をするというような状況である。
 非常に舵取りが難しい。

 しかし、まずは、子の教育費の負担軽減と、親の文化資本に大きくは左右されない教育環境の提供からなんとかできないものだろうかと考えている。